
国内だけではなく、国外にも支持を広げている「Like-it」。欧米を中心に30ヵ国の市場で製品を展開するなど、グローバルブランドとして順調に成長しています。
新企画「Like-itの世界見聞録」では、Like-itが世界で行っている取り組みをご紹介。
第1回のテーマは国際見本市「Ambiente」。海外事業部のスタッフに話を伺い、like-itのグローバル戦略を深堀りしていきます。
ライクイット編集部
世界中を飛び回っている海外事業部の皆さんに、ぜひ海外で見聞きした物事を教えてほしいと思い、「Like-itの世界見聞録」という企画を立ち上げました。
今回は海外事業部を代表して小原さんにお話を伺っていきます。

小原瑞季:大阪府出身。2019年に株式会社ライクイットに入社。趣味は旅行、ヨガ、美術館・博物館めぐり。
ライクイット編集部
今回のテーマは国際的な展示会「Ambiente(アンビエンテ)」についてです。
毎年2月にドイツで開催されているこの展示会に、Like-itは20年以上にわたって出展し続けています。
これまでの経験も踏まえて、いろいろとお話を聞かせてください。

Ambienteの会場の「Messe Frankfurt.」。一日では回りきれないほどの規模となっています。(提供:Messe Frankfurt Japan)
✍取材メモ:Ambiente
毎年2月にドイツ・フランクフルトで開催される展示会。
世界最大級のBtoBの国際見本市となっており、出展社数は4,000社、来場者数は10万人をゆうに超えます。

ライクイット編集部
今回のブースの写真を見させてもらいました。
Like-itらしく、シンプルかつミニマルな雰囲気となっていますね。どのようなことを意識しながらブースを作っていったのでしょうか。
小原さん
Like-it製品の強みであるデザイン性と機能性、そして耐久性がしっかりと伝わるよう、ひとつひとつ丁寧に展示する……というのが大きなテーマです。
展示会に出展する上で重要なのは、来場者様に製品の使い心地を確かめていただくことです。
そこで展示台の配置や高さを工夫し、目につきやすく、手に取りやすいように配慮しました。

小原さん
ブースの雰囲気に関して、「シンプル」と「ミニマル」というキーワードが出ましたが、それに加えて「モダン」という印象も、来場者様に与えられたのではないかと思います。
ライクイット編集部
興味深いです。そういう印象を与えた要因はなんだったのでしょうか?
小原さん
いろいろとあると思いますが……。「竹とプラスチック」、「鉄と木」のような、異素材を混ぜたアイテムが増えてきたことが、理由のひとつではないでしょうか。

竹材とプラスチックを組み合わせた「バンブーランドリーワゴン」。それぞれまったく異なる質感の素材が合わさることで、モダンな印象に仕上がっています。
ライクイット編集部
既存アイテム・新作アイテム共に反応は上々だったと伺いました。展示会を通じて、もっともよい反応があったのはどのアイテムでしょうか?
小原さん
個人的には「タイディアップボックス」に関心を持つ方が多いように感じました。特に2024年末に発売したブラックカラーの反応がよかったです。
このボックスは「発泡成形」という方法で製作しています。表面に気泡の模様が出るのですが、特にブラックカラーは気泡が目立ちやすいので、他の色よりも目を引いたのではないでしょうか。

ライクイット編集部
なるほど。「タイディアップボックス」は素材も加工方法もかなり特殊なアイテムなので、説明しがいがありそうですね。
小原さん
ありますね(笑)。バイヤーさんからは「素材について教えてほしい」とか「どう加工しているのかを説明してほしい」という質問をよく受けます。
収容納品で挙げると、頑丈な収納ボックス「スタックアップコンテナー」も好評でした。

小原さん
収納用品以外のアイテムでは「オーブンでも使える鉄フライパン」が特に注目されていました。
今回は展示方法を工夫してサイズ順に吊るしてみたのですがかなり好評でした。
こういうアイデアを今後も出していきたいですね。
目次
「環境対応+αがより強く求められている」
ライクイット編集部
アンビエンテは世界で最もトレンディな展示会です。ハウスウェア(家庭用品・生活用品)において、最新のトレンドテーマはどのようなものが挙げられますか?
小原さん
ニュートラルなアースカラーや、グリーン・ブルー系など自然を連想させる色味を基調に、オレンジやテラコッタなど暖色系の差し色を入れるのが、トレンドのひとつのようです。
また、伝統的な素材を、最新の技術で加工したり再現したりしているプロダクトも見受けられました。

ライクイット編集部
なるほど、どちらの傾向も興味深いです。
会場の写真を見ていると、ここ数年のトレンドを踏襲しつつ、少しずつ表現を変えているように感じました。いきなりガラッと変えるのではなく、流れを汲んでいるといいますか……。
小原さん
そうですね、たしかに流れを感じます。美容・ファッションは半期単位でトレンドが移り変わり、短い間にカラーや素材のトレンドが移り変わりますよね。
一方ハウスウェアの分野では、それらよりもトレンドの展開・循環がスローと言えると思います。

小原さん
トレンドに繋がる話ですが、数年前と比べて、「環境対応」をメインテーマに据える企業が減っているように思いました。
買い手側としても、商品を選定する理由において、環境対応の優先度は下がっているようです。
それよりも、商品力や価格、(メーカーの)供給力が重視されているというのが個人的な所感ですね。また、物流面の対応もより重要になっています。
ライクイット編集部
それは驚きです。環境性への配慮は最大のテーマだと思っていました。
小原さん
もちろん環境対応は依然として重要です。しかし、ここ数年の間に世界情勢が急激に悪化し、素材の調達や製品の供給を円滑に行うのが難しくなっています。
そのため、供給力や物流面の優先度が上がり、相対的に見て環境性の優先度が下がった……というのが実情に近いと思います。
「『ブランドが理想としている暮らし』が分かる展示」
ライクイット編集部
詳しくありがとうございます。Like-itはグローバル企業ですから、国際情勢が変化することによる影響は大きく、より柔軟な対応が求められますね。
さて、近年の世界的な出来事といえば、コロナウイルスのパンデミックが挙げられます。
大流行していた時期と比べ、どのような変化を感じられましたか?
小原さん
パンデミックの空気感から完全に抜け出した、と言っても差し支えないと思います。出展社・来場者ともに前向きなマインドになっていますね。

小原さん
その変化は展示場作りにも反映されており、壁を少なくした開放的なブースが増えてきたように感じました。壁を完全に取っ払ったブースも珍しくなかったです。
その一方で、ブースを壁で囲うことで、エクスクルーシブ(特別感・限定感)な空間を演出しているブランドもあり、実に多種多様ですね。
ライクイット編集部
ブースの「外面」が大きく変わっているということですね。展示の仕方に関してはどうでしょうか?
小原さん
製品をシリーズやカテゴリーで分け、ラインナップを一覧できるようにするのが、ごく一般的な展示方法です。これは想像しやすいですよね。
それとは別の形として、ブースにキッチンスペースやサニタリースペースを設け、関連商品を配置する「ライフスタイル型」の展示方法が増えているように感じました。

ライクイット編集部
トイレを設置するとは……なんとも大胆ですね。
小原さん
力が入っていますよね。「ブランドが理想としている暮らし」というような、言葉では伝えにくいことを視覚的に提案できるので、ブランディング施策としては非常に効果的な方法だと思います。
ライクイット編集部
来場者から「ライフスタイル型の展示でも見てみたい」というコメントもあったのではないでしょうか。
小原さん
はい、そういう意見をくださる方もいました。その一方で、「(今回のブースは)Like-itのデザインコンセプトが一目で伝わってくる」という意見もあり、捉え方は人それぞれのようです。
ライクイット編集部
どのように展示するかについては、今後の検討課題になりそうですね。
✍取材メモ:Like-itの展示方法
海外事業部を統括する榎田部長によると、「あえてシンプルな展示を行っているという側面もある」とのこと。
というのも、ライクイットの製品の多くは、日本の習慣や文化を下敷きに開発されています。
もしそれを下敷きにライフスタイル型を取り入れると、私たちの生活がよく伝わりますが、印象やイメージが固定されてしまう恐れがあります。
海外のバイヤーの想像力を掻き立て、思わぬアイデアを引き出すために、シンプルなブース作りを心がけているそうです。
「何年もかけて積み上げていくことの大切さ」
ライクイット編集部
ブースについてですが、他にもバイヤーさんからコメントやフィードバックはありましたか?
小原さん
想定以上にLike-itを知っているバイヤーさんが多かったです。Like-itは知らなくとも、「日本製は高品質」と認知している方は少なくありません。
製品のストーリーを伝える資料を用意するなどして、「Made in Japan=いいもの」という認識をさらに広めていきたいです。
Ambienteの開催地であるドイツ、ひいてはヨーロッパでは、古くから職人の技術や文化、歴史を尊重する文化が根づいています。
そういう土壌を考慮し、加工技術などをもっと打ち出してもいいかもしれません。

小原さん
そういえば。これは私の話ではなく、海外事業部の山本さんの話なのですが……。
山本さんがブースに立っているとき、あるバイヤーさんから「去年もここで会ったね」と声をかけてもらったそうです。
もちろん山本さんも彼のことを覚えていて、しばらく会話していたらしいんですね。
いろいろとやりとりをしているうちに、バイヤーさんが一緒にいた同僚に、「Like-itのこの製品はここがユニークでさ」と説明し始めたそうなんです。
そのアイテムは山本さんが去年、バイヤーさんに紹介したもので……。どうやら1年前の会話を記憶してくださっていたようなんです。
ライクイット編集部
信頼関係が伝わってくる、とても素敵なエピソードですね。
小原さん
ええ。何年もかけて積み上げていくことの大切さを改めて実感しました。
「こんなやり方があるのか」
ライクイット編集部
バイヤーさんとの再会は、山本さんにとって大きな収穫になったのではないかと思います。
それでは、海外事業部全体としてはどのような収穫がありましたか?
小原さん
これは発見でもあり課題でもあるのですが、営業スタイルが変わってきたと思いました。
そう強く感じたのが、大型ディスプレーに接客を「任せている」ブースを見た時です。
主に製品の動画を再生していたのですが、実にスタイリッシュな印象で、「こんなやり方があるのか」と感心しました。

小原さん
もちろん対面での接客は非常に大切です。それに加える形で、ディスプレーを活用したり、ライフスタイル型の展示方法を取り入れたりして、より多くのお客様に関心を持っていただけるようにしたいです。
「少しずつ積み上げていくのが、なによりも大事」
ライクイット編集部
詳しくありがとうございました。日本にいては知ることが難しい、海外のトレンドや情勢などを知れて勉強になりました。
それでは最後の質問です。Like-itがグローバルブランドとしてさらに成長していくために、もっとも大きな課題はなんでしょうか?
また、それをクリアするためにはどのような施策・アクションが必要でしょうか?
小原さん
国内・国外を問わず、価格面や物流面で強みを持つ競合他社は多数あります。
そこで戦っていくためには、Like-itの付加価値(デザイン性や機能性など)を理解してくれるパートナーを増やしていくのが重要です。
また、関税や物流コストなど、外部要因の変化に対応できる体制を整えていくのも重要です。

小原さん
物流面に関しては、海外での物流拠点を整えるなど、できることは数多くあります。進行中の計画がいくつかあるので、それを一日でも早く形にしたいですね。
現在、市場の低迷などにより、消費行動は減少しています。消費行動の低迷に呼応する形で、バイヤーからの注文量も減少しています。
業界全体が厳しい状況にありますが、価値観を共有できるパートナーと共に、各国の市場ニーズに対応した戦略を練り上げていくことで、きっと状況を変えられると信じています。

小原さん
世界でのポジションを確立するためには、数え切れないほどの課題があります。でも近道はありません。
今回の出張で改めて気付かされたように、少しずつ積み上げていくのが、なによりも大事だと私たちは考えています。
✍編集後記
今回の取材を通じ、「積み上げていくことの大事さ」を改めて実感しました。
たとえば、一年前に紹介した製品について語り合うバイヤーと担当者のエピソードは、まさに一朝一夕では成し得ない信頼関係の証ではないでしょうか。
「Made in Japan=いいもの」という認識が広がっている背景には、こうした地道な信頼関係の積み重ねがあるように感じました。
一見、華やかに思える国際舞台。その裏側には、一つ一つの出会いを大切にし、地道に製品の品質やストーリーを伝え続けている、Like-itの海外事業部の姿があります。
市場の低迷や外部環境の変化といった困難な状況にあっても、Like-itが「少しずつ積み上げていく」姿勢を貫く先に、揺るぎないグローバルブランドとしての未来が拓けているように思います。









